電気自動車(EV)というとプラグを使って充電、しかも時間が掛かるイメージ。
プラグ無しでワイヤレス充電できる技術自体は実用化が近いと言われている中、現在、走りながら充電できるシステムの実証実験が始められているという。
【参考】モーニングサテライト、大浜見聞録、モビリティー革命前夜 走りながら充電(2021年5月27日放送)
ー目次ー
ワイヤレス充電の原理
大阪市内にある電力機器大手のダイヘンは、エネルギー大手出光興産と組んでワイヤレス充電の実証実験を重ねている。
送電用コイルが設置された地面の上に自動車を止めると、そのコイルから自動的に電気が送られ充電を開始、およそ8時間でフル充電されるという。
※超小型EV用ワイヤレス充電システム
ワイヤレス充電に使われているのは「磁界共鳴」という方式。
- 地面側のコイルに電気が流れると磁界が発生する
- 車の下側には、電気を受け取るコイルがあり、特定の周波数では、車側のコイルが共振(共鳴)し2つのコイルをつなぐ(磁界が2つのコイルを貫く)
- この磁界により、車側のコイルに電気が流れる
という仕組みである。
駐車中でのワイヤレス充電においては、小型のEV車では既に実用段階、来年には普通車にもこのシステムが適用される様、自動車メーカーと交渉中であるという。
「走りながら充電」の試み
千葉県柏市、東京大学柏キャンパスでは、更に一歩先を行く実験が進められている。
車を走らせながらワイヤレス充電をしようとする取組みである。
車体にも工夫あり。タイヤの中にモーターがあり、直接タイヤを回すインホイールモーターを採用するという。タイヤホイールの中にモーター、文字通り車輪毎にモーターがあり、独立して制御する仕組みとなる。
従来のEVでは、車体の中にあるモーターの力がシャフトを通して2つのタイヤに伝わるため効率が落ちる。
インホイールモーターでは、直接タイヤを回すことで効率的に電気を使うことができる。このインホイールモーターの横に受電コイルを設置することで、地面側の送電コイルから送られてくるエネルギー(電気)をそのまま使うことができ、またバッテリーに貯められる様にもなる。
課題はインフラ面と国際規格
普及のカギの一つとなるのは、このシステムに必要となる充電施設を「どこに?」「どのくらい?」設置するかといったインフラ面の整備である。走行中給電時間が1秒であるのと2秒であるのではエネルギーは倍違う。当然時間的に長くとどまる所にコイルを置いた方が有利となる。
街の中で走行するモデルケースでは走行時間の1/4が交差点にいることから、交差点から30mまでの区間にコイルを置けば止まって充電をしなくてよくなると試算(シミュレーション)。実際の走行検証でこれが実現されてくれば、EV車の普及の上でも大きなアドバンテージになる
平均的に電力がキープできることがポイントとなる。
つまり、バッテリー残量が80%で走り始めて、走り終わっても80%のままであること。これにより、家での充電や急速充電ステーションも必要なくなると伴に、大きいバッテリー(蓄電池)を車に積む必要がなくなる。
電気自動車の価格が300万円だとするとおよそ100万円の電池にかかるコストが20万円程度ですみ、かなり手ごろな価格の車になる可能性が生まれるという。
現在、このプロジェクトに民間企業12社が参画し共同開発中、技術革新に取り組んでいるという。但し、この走行中の充電に関しては海外8カ国(イギリス、スウェーデン、イタリア、韓国、スペイン、イスラエル、ドイツ、アメリカ)で実証実験が進められている。
どの国やメーカーが国際規格を勝ち取るか?
東京大学では、柏の葉スマートシティーでの実証実験を計画中であり、2023年からスタート予定。国際規格を勝ち取るべく、国を挙げて取り組めるか否か、大事なタイミングであるという。
まとめ
「解決するべき課題」はまだまだ多いかも知れない。
しかしながら2050年カーボンニュートラルに向け世界が動き出した中で、その貢献につながる技術要素が少しずつでも確立されてくることは意義が大きいと考える。
使える技術要素が増えることによって展開における選択肢(自由度)は広がる。
いきなり「一般家庭の乗用車向けに展開できなければダメだ」という前提でスタートするとなかなか大変である。
要素技術を実用段階に落とし込んでいくにあたっては「小さくてかつ有意義なモデル」をいくつか設定し進めていくことが現実的で有効であると考える。
- 所定のルートを走行するバス等公共の乗り物
- 特定のルートにおいて人やモノの運搬に採用される自動運転車
- メンテナンスや管理が行き届きやすいレンタカーやシェアリングカー
等
小さなモデルで検証を繰り返し、それが相乗的に影響しあって起こる大きな技術革新に辿り着くのに、30年は決して短くないのでは?
この様な技術にたずさわるエンジニアのおかげで、2050年における『新しい日常』が人にとっても、地球にとってもよくなっていることに期待するとともに「挑戦してくれている」こと自体に感謝したい。
以上
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