「20秒」で完了。
電気自動車(EV)における電池交換の話である。一般的な充電では数時間掛かるのがたったの20秒。ガソリンを満タンにする所要時間(5~10分間)と比較しても速い。しかも全自動であるため、運転手は車から降りる必要もない。
中国では、この電池交換ステーションが既に23都市338カ所に展開されているという。相変わらず中国のスピード感には驚かされる。
【参考】モーニングサテライト“中国Tech No.17 広がるEVの“救世主”(2021年8月6日放送)
EV(電気自動車)の普及が進む中国で、その弱点でもある充電を補う新技術「電池交換式EV(電気自動車)」が注目されているという。本記事ではその情報を共有する。
ー目次ー
EVの電池交換ステーション
EV(電気自動車)がおよそ500万台(493万台/21年6月末現在)まで普及した中国ではタクシーのEV化も急速に進んでいるという。
3ヶ月前からEV電気自動車に乗り換えたタクシードライバー曰く
「ガソリン車を運転していた時には毎日のガソリン代は約200元(3,400円)。電気自動車だと、毎日60元(1,020円)しかかからない。毎日100元以上のコストを改善できた」
一ケ月の収入は日本円で5~7万円増加している換算であり燃料費の効果も大きいがポイントはここからである。
航続(走行)可能距離が100kmを切ったところで、スマートフォンを確認し、ある赤い建物(ゲート)を目指す。到着するとゲートの中に入り、エンジンを止めそのまま車中で待機。電池交換を実施する。全自動であり人手は掛からない。その交換スピードは、ガソリンの給油より早い。
この赤い建物(ゲート)が、Aulton(オールトン)という会社が開発した「EV電池交換ステーション」である。
赤い建物(ゲート)に進入し車を止めると、両側から出てきた黄色いアームが車体を固定、すると車体の底に特殊な装置が入り、底にくっつくと突起のある黒いものを取り外す。使用済みの電池である。その後、右から出てきた充電済みの電池を取り付けて交換作業は完了、全自動でわずか20秒。
交換作業の速さの秘密は、ボルトを一切使わず特殊な留め金を用いることで、車の底でのバッテリーの着脱交換作業をシンプルにした点にあるという。またこの方式で、およそ1万2,000回もの着脱が可能であり、高い耐久性を実現。
赤い建物(ゲート)は、電池のストッカーにもなっており、左右それぞれ30個の収納が可能、ここで使用済みの電池を常に充電している。
取り外された使用済みの電池が充電され、充電済み電池として再利用できる様になるまでおよそ2時間。通常一日600~700回の交換をしている。
前述のタクシーの場合一回の交換で300キロの走行が可能。
ドライバーはスマートフォンのアプリで、充電済みの電池が「どこのステーションに」「どれだけあるか」を確認することができる。
Aulton(オールトン)は、この電池交換ステーションを上海や北京など既に23都市で338カ所展開。最大手のガソリンスタンドチェーンとも提携するなどして設置場所を急速に拡大中。
中国国内14社の主要自動車メーカーと提携し、22車種の電池交換バージョンを開発済み。自動車メーカーはAulton(オールトン)が定めた規格に合わせて、電池や車両本体を開発する流れが仕組み化されている。
EVの電池交換ステーションの利点と課題
現在はタクシーなど業務用が中心だが、更なる普及を見据えて一般ユーザーにも試験的に販売しているという。
北京に住む、Aulton(オールトン)の電池交換式EV(電気自動車)のユーザー曰く、
「EV(電気自動車)の電池の消耗はとても激しい。充電スタンドで急速充電すると電池の消耗が早い。2-3年で電池の価値が下がる」
「電池が劣化しても交換することができるため、車の買い替えが電池の寿命に左右されなくていい」
電池交換式を購入した最大の理由は住宅団地にある充電スポットにある。3,000世帯の大きな団地に充電スタンドは10台分しかない。それ故、その充電スタンドで充電した時には、満充電になったら速やかに出ていかないといけない。
夜は常に満車状態であり、わざわざ他の場所に行って充電する車も多い。中国では、EV(電気自動車)の急増に、住宅の充電設備の整備が追い付かず、大きな問題となっている。
こうした社会問題に対処するべく、Aulton(オールトン)は2025年までに電池交換ステーションを10,000カ所までに増やす目標を掲げる他、海外市場への進出も検討しているという。
日本のメーカーでは、日産、ホンダ、トヨタ、三菱、と接触中。日本に(電池交換の)モデルを導入したいメーカーもあれば、中国市場での電動化で電池交換の導入を検討するメーカーもあるという。
中国では、電池交換式EV(電気自動車)のシェアは全体からみるとまだ非常にわずか。ただ、中国政府は電池交換についての耐久性や安全性の基準を定め2021年11月から適用する予定であり、普及にむけた後押しをしているという。
そもそも中国では、自宅に充電設備があるユーザーは4割から5割程であり、まだまだ本命とはいえないが、電池交換式EVに追い風が吹いていることも確かである。
まとめ
今やAI(人口知能)でもEV(電気自動車)でもドローンの活用でも、先端技術に関わることでは何をするにもスピード感が半端ない中国。
この電池交換式に関しては「使用済み」として回収された電池をどう管理できるか?この点をきっちりシステム化されることで、更に実用的な技術に飛躍するのではと個人的には考える。
電気自動車向けのバッテリーは、その機能や安全性の観点から劣化消耗の許容値が狭い(交換基準が厳しい)という。この厄介なバッテリーの劣化消耗の管理を個人でなく、企業側で一括管理できる意義は大きいのでは?
製造ロット、電池使用時間、電池交換回数、外観的な異常有無等あらゆる状態をデータ化し、それらのデータをベースに、回収された電池の電池性能(パフォーマンス、劣化や寿命状態)を都度推し測り、再使用するか廃棄するか判断する。
廃棄と判断された電池はEV(電気自動車)用としては使えなくなっただけであり、その後の再利用先までを見据えたフローをシステム化できるのではという可能性に新しい価値を感じる。
まだ過渡期のEV(電気自動車)業界、今後どの様な技術が生まれてくるのか?まだまだ不透明な部分が多い。いずれにしてもスピード感がやや劣る日本勢においては、最新技術の動向をよく見極めて、最終的に日本とって最適な形を『新しい日常』に落とし込まれることを期待したい。
以上
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