毎日利用するお得意様の方が、ほとんど利用しない一般客より料金が2倍以上高くなる⁈
スマートフォンにて「乗車場所と行き先を表示させることで、乗る前に料金を知ることができる」サービスを提供する、タクシー配車サービス会社、滴滴(ディディ)。独自のダイナミックプライシングが「お客によって価格が違う⁈」現象を引き起こしている。
ダイナミックプライシングとは、日本では早割などが代表的であり、商品やサービスの需要と供給の状況に合わせて価格を変動させる価格戦略。
個人的には、例えば「特定の時間に乗車が集中する満員電車を解消するべく、鉄道会社で時間帯により運賃を変動させる(空いている時間帯で運賃を安くする)」様な社会問題を解決すると伴に消費者もお得になる、といった合理的でよいイメージがあり、消費者にとって決して悪いものではないと考える。
中国では、消費者に不利益をもたらす不可解な価格変動が頻繁に起きており社会問題になっているという。
【参考】モーニングサテライト “中国Tech No.16「不利益な“価格変動”の実態」“(2021年7月7日放送)
ー目次ー
IT化が進む中国で起こる不可解な価格変動
買い物や移動、食事のデリバリーサービスなど、あらゆるものがスマートフォンで提供され急速にIT化が進む中国。今、そのIT化に伴い収集されたビックデータを用いた「価格差別」が起きているという。
タクシーの配車サービス(滴滴 ディディ)。ほぼ毎日利用する会員(お得意様)とほとんど利用しない会員でどの様な価格差が生まれるのか?検証を実施。本来ならヘビーユーザーである、ほぼ毎日利用する会員(お得意様)の方が安くなると予測するが果たして・・・
条件をそろえるため同じ出発地と目的地を設定、同じタイミングで注文。
結果(事前の見積もり)、
- ほぼ毎日利用する会員(お得意様) 20.63元(353円)
- ほとんど利用しない会員 9.85元(168円)
全く同じ条件にも関わらず、ほぼ毎日利用する会員(お得意様)の方が2倍以上高い。
実際に利用してみると乗車してみると、同じ時刻で、同じルート、信号待ちなどにより数分の差がでたものの所要時間はほぼ同じ。結果(実際に乗車して)
- ほぼ毎日利用する会員(お得意様) 19.71元(338円)
- ほとんど利用しない会員 9.55元(163円)
明細には
ほぼ毎日利用する会員(お得意様)
- 距離費:3.4km 10.71元
- 時間費:15分間 9.00元
- 割引費: 0.00元
ほとんど利用しない会員
- 距離費:3.4km 10.71元
- 時間費:14分間 8.4元
- 割引費: -9.56元
ほとんど利用しない会員には割引があり、ほぼ毎日利用する会員(お得意様)には割引がない。
結果としてほぼ毎日利用する会員(お得意様)の方が高額となり、価格的には「損をした気分になる」という不可解な構図。
インターネットの苦情サイト「黒猫投訴」では、こうしたダイナミックプライシングに対する苦情が多く寄せられているという。
その中には、ホテルの予約サイトで、スマートフォンの違いにより価格差がでる(i-phoneの方がアンドロイドよりも高い)といった話もある。
中国で不可解な価格変動が起こる理由
消費者問題に詳しい専門家曰く、
「あなたが i-phone12 を使っているとする。こんなに早く最新の携帯を買っているのは価格に敏感でないことの証拠と判断される」
中国では高級品の i-phone を使うユーザーはアンドロイドユーザーよりも「お金に余裕がある」と判断されるという。
また、消費者はオンライン上での全ての行為を分析され“ユーザー像”を形成されていることも影響している。
スマートフォンを使用する時に、どのページにどの程度とどまるか? どの写真や言葉に関心を持つか?全ての行為に対してシステムは注目している。その結果として、一つの製品やサービスに対して「千人千価格」が生まれる。
購入するブランドの好み、購入するまでの時間、性別、年齢、学歴、収入、趣味等、スマートフォンからあらゆる情報が収集され価格の決定に利用されているという。
価格決定の背後にはアルゴリズム(プログラムで用いられる、問題を解決するための手順や計算方法)があるが、実際にそれが人をどう分析しているかはわからない。
消費者は決められた価格に対して抵抗する力もないし、間違っているとも言えない。消費者は弱い立場にある。
果たしてこれは、ダイナミックプライシングの本来の目的である「より良い個性的なサービスの提供」に合致している動きなのか?
ダイナミックプライシングは悪い?
ここまで聞くと、ダイナミックプライシングは消費者にとってあまりメリットが無い様に見える。
実際に街で市民の話を聞くと
「堪えるしかない」「個人の力ではどうしようもない」
あきらめの声が多い一方で
「便利さを享受できているのだから仕方がない」
という声もあるようだ。
今回紹介した配車サービスの滴滴(ディディ)は、価格差別が存在してはいるものの、行き先を入力した瞬間に、渋滞などの交状況を考慮した最適なルートが設定されるなど、ITやAIの技術を駆使したサービスを消費者に提供しており、既存のタクシーよりも圧倒的に便利である。
中国ではIT化によって生活の便利性を急速に向上してきた。多少の価格差別はトレードオフとの見方もできる。
黙っていないは消費者だけではない?
便利さの裏には膨大な個人情報の収集がある。
機を同じくして、異を唱えているのは中国政府である。
上述の様な価格差別が調査対象かどうかは不明であるが、中国規制当局は4日(2021年7月4日)、滴滴(ディディ)に対して個人情報の収集と利用において重大な違反があったとしてアプリの新規ダウンロードの停止を命じたという。
共産党メディアの環球時報は「いかなるIT企業も国家より詳しく個人情報を収集してはいけない」「さらには自由にデータを活用する権利を与えてはいけない」と厳しく批判している。
また中国政府は6日(2021年7月6日)、海外の市場に上場する中国企業への規制を強化すると発表。中国国営の新華社通信を通じて発表されたもので、中国政府は国境を越えたデータの取り扱いに関する、管理、監督の法規制を整えるとしている。
中国企業の海外での上場を巡っては、先月30日(2021年6月30日)にNY証券取引所に上場したばかりの配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)に対しインターネット規制当局が調査を始めるなど対応の強化が鮮明になっている。
中国の発展を大きく支えてきたIT企業への締め付けが厳しくなってきていることは確かである。
まとめ
中国における「ダイナミックプライシング」の話は、オンライン上の商品やサービスの普及により日常生活の利便性が高まる中で、ビックデータやAIを駆使し最適化される結果として、「消費者が弱い立場になる可能性がある」と言う事を物語る。
事業者が顧客単価を上げるというのは、ビジネスの上、今に始まったことではない。
- 売れる商品を組み合わせてセット販売する、
- より品質レベルの高い商品やサービスに改善する、
- 商品やサービスをより気に入ってくれるお客様が入手しやすくなる仕組みを作る
等、その背景にはお客にとっても付加価値をつけることが前提となっていることが望ましい。
この人はお金に無頓着であるからより高い価格で売りつけようとする、しかもアルゴリズムというブラックボックスの中で秘密裏に実施されている、という点が気にかかる。
上記のタクシー配車サービスで言えば、お得意様であれば、予約が込み合う中で優先的に配車がされる、だから価格は少し高くなると説明されれば悪い気はしない。
それでも、滴滴(ディディ)の件は、少なくとも、事前に値段が示されるサービスであり「まだ選択の余地がある」という点で消費者の立場は守られているのでは?
世界に遅れこれから急速にIT化を進めようとしている日本。中国の様な不可解な事例が起きないとは限らない。
かといって、いちいち不可解な現象に気を使い続ける様では、利便性は増しても、豊かさは増さない。
『新しい日常』においては、オンライン上に限らないが「安全」「安心」「信頼」をバランスよく持ち合わせることが企業や社会に求められると考える。
以上
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